「利益率へのこだわりを持つ営業組織の作り方」値引き依存のダメな営業を断ち切る重要な視点

2026.07.24

齋藤英人
レゾンデートル株式会社 代表取締役
『行動創造理論』第一人者
自らが開発した「行動創造理論」を活用し企業研修、公開講座、ビジネス講演など年間100回以上登壇をしており、大手企業や成長企業を中心に営業力向上と売上拡大に力を注いでいる

「なぜ、うちの営業はいつも値引きをしてしまうのか…」
「利益率が改善されず、売上が増えても手元に残らない…」
 
 
営業マネージャーや中堅営業パーソンであれば、こうした経験を一度はしているはずです。
 
 
結論からお伝えします。
 
 
利益率が上がらないのは、営業パーソンのスキル不足ではなく、お客様の「無意識の感情」を動かせていないからです。
 
 
値引きは「お客様から求められる」のではなく、「営業が先に差し出している」ケースがほとんどです。そしてその根本には、お客様の意思決定プロセスへの誤解があります。
 
 
本記事では、行動創造理論の視点から「利益率へのこだわりを持つ営業組織の作り方」を解説します。
 
 

利益率が上がらない本当の理由

 
多くの企業が「利益率改善」を掲げながら、一向に変わらない現実があります。その原因は、表面的なテクニックではなく、もっと根深いところにあります。
 
 

値引き依存が生み出す悪循環

値引き依存の悪循環のイメージ
 
「今回だけ特別に」という値引きが、気づけば標準価格になっている——これは多くの営業組織が経験していることです。
 
 
値引きの本質的な問題は、一度行うと「それが当たり前」という記憶がお客様の脳内に形成されることです。
 
 
行動創造理論の観点からいえば、意思決定は目の前の情報と脳の中の情報を組み合わせることで作られます。値引きした実績は「この会社は交渉すれば下がる」という記憶として蓄積され、次回以降の商談の出発点がすでにアンカリングとして存在し「値引きありき」になってしまいます。
 
 

値引きの悪循環 :一度の値引きが「交渉すれば下がる」という記憶を形成する
標準価格の崩壊 :お客様の期待値が下がり、定価での受注が困難になる
利益率の慢性的低下 :売上が増えても収益が改善しない構造が固定化される

 
 
この悪循環を断ち切るには、値引きという「行動」を変えるだけでなく、お客様の記憶と意思決定そのものを書き換えるアプローチが必要です。
 
 

営業パーソンの無意識のブレーキ

営業パーソンの無意識のブレーキ
 
「値引きを断ったら、関係が壊れるかもしれない」——この不安を、ほぼすべての営業パーソンが持っています。
 
 
行動創造理論では、人の意思決定の97〜99%は無意識下で行われると説きます。感情で先に行動を決定し、論理はその後に意思決定を正当化するために使われます。
 
 
つまり、営業パーソン自身が「値引きしないと失注する」という恐怖を無意識に抱いており、その感情が利益率を守るという論理より先に「値引き」という行動を引き起こしているのです。
 
 

営業
営業
なぜ値引きせずに断れないのか? それは「断る論理」ではなく「断る感情的根拠」が不足しているからです。

 
 
研修で「値引きしてはいけない」というルールを学んでも変わらない理由がここにあります。無意識の恐怖に勝てるのは、別の感情だけです。
 
 

営業研修で学んでも変わらない現実

営業研修
 
厳しいデータがあります。研修後に実践するのは受講者の約10%、1年後も継続しているのはわずか1%に過ぎません。
 
 
多くの企業が「利益率改善のための価格交渉研修」に投資しながら、現場が変わらない最大の理由がここにあります。研修が伝えるのはほとんどの場合「何をすべきか(論理)」であって、「なぜそれをやらないのか(感情)」への働きかけが欠けているのです。
 
 
行動創造理論では、行動変容は感情の変容なしには起きないと考えます。「値引きをするな」という指示は、「恐怖から逃げるな」という命令と同じです。それでは人は動きません。
 
 
必要なのは、値引きしないことへの感情的な納得感——つまり、「値引きしない方が、むしろお客様との関係が深まる」という体験的理解です。
 
 

行動創造理論が明かす意思決定の真実

 
では、お客様はどのようにして「買う・買わない」「価格を受け入れる・交渉する」を決定しているのでしょうか。行動創造理論の核心に触れていきます。
 
 

97〜99%は無意識で決まる


 
お客様が「高い」と言うとき、それは理性的な判断ではなく、感情的な反射である場合がほとんどです。
 
 
行動創造理論の根幹にある原則として、人の意思決定の97〜99%は無意識下で行われます。感情で行動を先に決定し、論理はその後に意思決定を正当化するために使われます。
 
 
これが営業に示唆することは何か。「価格が高い」というお客様の発言に対して、論理(費用対効果・他社比較・ROI)で返すことは、本質的にズレているということです。お客様はすでに感情で「提示された金額では何か引っかかる」と感じており、それを言語化するために「高い」という言葉を使っているに過ぎません。
 
 

感情先行 :「高い」という言葉は感情的な反射であることが多い
論理は後付け :お客様は感情で決めた後、論理で自分の決断を正当化する
働きかける順序 :論理より先に感情を動かすことが意思決定を促進する

 
 
価格交渉に負けないためには、まずお客様の感情に正しく働きかけることが先決です。
 
 

連想記憶を活性化する「問い」の力


 
行動創造理論では、正しい問いが記憶を活性化させ、お客様の感情と論理を同時に動かすと考えます。
 
 
意思決定のメカニズムはシンプルです。目の前の情報と脳の中の情報(過去の経験・感情・知識)が組み合わさることで、新たな認識が生まれます。営業パーソンが一方的に話す「説明」は、お客様の脳の中の情報を引き出しません。しかし「問い」は違います。
 
 

営業
営業
「もし今のコスト構造が5年後も続いた場合、どんな影響があると思いますか?」

 
——この問いは、お客様自身の記憶と感情を引き出します。
 
行動創造理論では「気づきの問い」としています。
 
 
お客様が自分の言葉で課題を語ったとき、それはもはや「営業の言葉」ではなく「自分の言葉」です。人が最も信頼する言葉は、自分自身が発した言葉である——これが行動創造理論における「意思決定」の本質です。
 
 

損失回避性を利用した価格の伝え方


 
行動経済学でも証明されているように、人は利得よりも損失を2倍〜2.5倍強く感じます。行動創造理論では、この恐怖を問いによってお客様の内側から引き出すことを推奨しています。
 
 
多くの営業パーソンが価格を語るとき、「この製品を導入すると〇〇が得られます」という利得の言語を使います。しかしお客様の脳はそれよりも、「このまま現状を続けると何を失うか」という損失の感情に強く反応します。
 
 
価格交渉の場面で最も効果的なのは、値引きで「得する額」を伝えることではなく、今の課題を放置することで失う機会・時間・競争優位性をお客様自身に語らせることです。
 
 

利得フレーム(弱い) :「導入すれば年間100万円のコスト削減になります」
損失フレーム(強い) :「現状のまま続けた場合、来年度はどのくらいの機会損失が発生すると思いますか?」

 
 

利益率を守る「営業商談」の設計

 
理論がわかったとしても、実際の商談でどう行動すればいいか——ここからは具体的な実践に落とし込みます。
 
 

「価格」ではなく「損失」を語る商談設計


 
価格を守るための商談は、価格の話をするに勝負が決まっています。
 
 
行動創造理論における「営業体験」とは、お客様の意思決定を前に進めるために、営業が能動的に関与する行為です。これはプレゼンテーションでも説明でもなく、お客様が「自分はなぜこれを必要としているのか」を自分自身で言語化するプロセスを設計することです。
 
 
具体的には、商談の冒頭で以下のような問いを投げかけます。
 
 

営業
営業
「現在、利益率についてどのような課題感をお持ちですか?理想と現実のギャップはどこにあると感じていますか?」

 
 
この問いに対してお客様が自分の言葉で答えたとき、その言葉が後の価格交渉における「錨(アンカー)」になります。「あなた自身がおっしゃっていた〇〇の課題を解決するために、この投資金額は必要です」——これは値引きを断る「論理」ではなく、お客様自身の感情的な合意に基づく「確認」です。
 
 

顧客の言葉で合意を積み重ねる


 
利益率を守る営業が一貫して行っていることがあります。それは、お客様自身の言葉を積み上げることです。
 
 
行動創造理論では、人が最も信頼する言葉は自分自身が発した言葉であると定義しています。商談の中でお客様が「そうなんです、ここがずっと課題で…」と語ったとき、それは単なる情報共有ではありません。その言葉は、お客様の記憶の中にある感情的な部分が言語化された瞬間です。
 
 
営業パーソンの役割は、その言葉を記録し、提案の中で「お客様がおっしゃっていた〇〇という課題について…」と返すことです。繰り返すことによりお客様は「この営業は自分の話をちゃんと聞いていた」という信頼と「この課題は自分にとって本当に重要だ」という再認識を同時に得ます。
 
 
この積み重ねが、最終的な価格交渉の場面で「やっぱりここにお願いしよう」という感情的決断を生みます。
 
 

値引きゼロで決断を前に進める問いの技術


 
「値引きなしで決断してもらう」ために最も効果的なのは、説得ではなくお客様自身に「決めない理由がない」と気づかせる問いを設計することです。
 
 
研修後に実践するのは受講者の約10%、1年後も継続しているのはわずか1%というデータが示すように、知識だけでは行動は変わりません。問いを設計する技術もまた、反復と体験によってのみ身につきます。
 
 
具体的な「気づきの問い」の例を挙げます。
 
 

現状固定化の問い :「このまま何も変えなかった場合、1年後の状況はどうなっていると思いますか?」
損失確認の問い :「先ほどおっしゃっていた〇〇の課題が解決されないと、最も大きな影響はどこに出ますか?」
決断促進の問い :「今回の判断を先送りにするとしたら、その間に起こりうるリスクは何だとお考えですか?」

 
 
これらの問いにお客様が自分の言葉で答えるとき、その言葉は「行動しない理由」ではなく「行動すべき理由」を自分自身に語りかけていることになります。値引きで動かすのではなく、お客様の感情と論理を同時に動かすことで、利益率を守った受注が実現します。
 
 
そして最後にある質問を投げかけます。
この質問は行動創造理論の営業トレーニングを受講した方ならわかりますね。
 
 

まとめ:利益率へのこだわりは「感情設計」から始まる

 
ここまでお読みいただきありがとうございます。
 
 
もしあなたが今、

・値引きなしでは競合に負けてしまうと感じている
・研修を実施しても営業パーソンの行動が変わらない
・売上は伸びているのに利益率が一向に改善しない

 
そう感じているなら、それは営業パーソンのスキルや意欲の問題ではありません。
 
 
根本にあるのは「お客様の無意識の感情に働きかける設計がされていない」ことです。
 
 
人の意思決定の97〜99%は無意識下で行われます。お客様が「高い」と感じるのも、「やっぱりここにお願いしよう」と決断するのも、すべて感情が先です。行動創造理論が示すのは、その感情を正しい問いで引き出し、お客様自身の言葉で「決める理由」を語らせることの重要性です。
 
 
利益率へのこだわりとは、値引きを断る「勇気」ではなく、値引きが不要になる「営業商談を設計する力」です。
 
 

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行動創造理論第一人者
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