【第30回ショッピングの科学】お客様が商品を手に入れるのはレジではない

2019.11.23

齋藤英人
レゾンデートル株式会社 代表取締役
『行動創造理論』第一人者
自らが開発した「行動創造理論」を活用し企業研修、公開講座、ビジネス講演など年間100回以上登壇をしており、大手企業や成長企業を中心に営業力向上と売上拡大に力を注いでいる

 

ショッピングとは何か?それは所有権の移行

 

 

今日はシリーズ「ショッピングの科学」
をお送りいたします。

 

第30回のテーマは
「所有するタイミング」
というテーマに触れてみたいと思います。

 

<index>

①買い物しようとしたものはいつ自分のものになる?

②買い物客が所有する本当のタイミング

③行動科学が証明「早めに試させた方がよい理由」

 

 

■買い物しようとしたものはいつ自分のものになる?

 

買い物をする時の流れは以下の通りです。

 

お店に入る

棚やPOPを見る

商品を見る

商品を手に取る

かごに入れる

レジに並ぶ

お金を払う

 

 

では問題です。

 

買い物客が買おうとしたものを
「自分のものにするタイミング」
はいつだと思いますか?

 

法的には
「レジでお金を払った時」
となるでしょう。

 

ただレジほどお客様にとって憂鬱な場所はありません。

そこで所有の喜びをかみしめている人を見たことがありません。

(しいて言えばプレゼントを買ってもらえる子供くらいでしょうか)

 

実際レジで味わう場面と感情はこんなものではないでしょうか?

 

金銭を失う喪失感

列で待っているイライラ

クレジットカードの照会の面倒

手際の悪い店員のレジ打ちと袋づめへの気持ち

 

どちらかと言えば
「苦痛の時間」
と言えそうな時間ではないでしょうか?

 

ではどのタイミングで所有をしているのでしょうか?

 

 

■買い物客が所有する本当のタイミング

 

レジでは無いとするとどこで所有をしているのでしょうか?

 

それは
「お客様の感覚が買い物の対象としてとらえた時」
です。

 

所有というのは
「感情的なプロセス」
と言い換えることができます。

 

実際に購入する以前から
「脳では所有をしている」
と認識を始めているということです。

 

まずは目で、続いて感触で捉えようとします。

 

実際に手に取ったり

背負ってみたり

口に入れてみたり

匂いを嗅いでみたり

音を聞いてみたり

 

これが所有へのプロセスです。

支払いは事務手続きで、それ以前に所有の手続きは始まっています。

 

お店側がやるべきことは
「早い段階で試してもらうこと」
です。

 

これは脳科学的に非常に有効なことが分かっています。

 

 

■行動科学が証明「早めに試させた方がよい理由」

 

早くにお客様が試すことで
「お店からお客様に所有化が移行する」
ということです。

 

つまりお店にとっては売上があがるということです。

 

しかし多くのお店は
「商品が試しにくい」
状況を自ら作り出しています。

 

このような売り場ではなかなか所有権が移りません。

いつまでも商品はお店が所有したままです。

 

 

営業の世界でも一流の営業は
「所有している」
と想像させるのに長けています。

 

そうすることが提案商品の価値をあげることを肌で感じているからです。

 

行動科学では
「保有効果」
とよばれる心理効用です。

 

人は一度保有したものの価値を大きく感じるという
「脳のメカニズム」です。

 

一番顕著なのは
「オークションサイト」
での入札です。

 

一度入札した人はその時点で
「保有をした」
と錯覚をしています。

 

そのため手放したくない気持ちが強くなり
「予算以上の金額で入札をしてしまう」
というのは脳のメカニズムによるものです。

 

営業でも実際に高い金額で契約をすることができます。

 

ショッピングというのは
「所有権をお店からお客様に移行する作業」
と言い換えられるかもしれません。

 

では、お店がすべきことはなんでしょうか?

 

「見て触って試せる」
そんな環境を創りお客様に提供することではないでしょうか?

 

そしてお客様に早く所有してもらい
「保有効果」
を発揮させることではないでしょうか?

 

今日はショッピングの科学
「所有するタイミング」
というテーマに触れてみました。

 

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著者

行動創造理論第一人者
レゾンデートル株式会社代表取締役
齋藤英人

自らが開発した「行動創造理論」を活用し企業研修、公開講座、ビジネス講演など年間100回以上登壇をしており、大手企業や成長企業を中心に営業力向上と売上拡大に力を注いでいる

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