
嫌われた和尚さんがなぜ好かれるようになったか?
大人気のビジネス寓話シリーズをお送りいたします。
今日のお話は
「たぬきの手習い」
です。
このお話にはどんな教訓があるのでしょうか?
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昔山すその寺に
「源哲」
という和尚がやってきました。
さっそく村の人たちは挨拶するため寺にやってきました。
しかし屋根の上で酒を飲んでいる和尚さんを見つけ、あきれて声もかけずに帰って行った。
村の人には相手にされなかった源哲でしたが
「面白そうな和尚さんだ」
と裏山に住む子たぬきにはすっかり気に入られてしまいました。
タヌキは人間の子供に化けて源哲に声をかけました。
子供好きの源哲は
「よし読み書きを教えてやろう」
といってたぬきたちは読み書きを教わることになりました。
源哲と子たぬきたちが楽しそうなのを見て
「村の子供たち」
も親に内緒で習いに来るようになりました。
ある日のこと、手習いのお礼にと、村の子どもたちは近くの川で獲った魚を和尚さんに差し出しました。
子たぬきたちも何かお礼をしようと話し合い、雨の日に和尚さんの代わりに酒を買いに行くようになった。
ところが、酒屋の主人が
「雨の日にだけやって来る子供たちを怪しい」
と思いました。
ある雨の夜、こっそりと子供たちのあとをつけていきました。
寺に入ったところで子供たちにしっぽがある事に気が付き、持っていた傘で思いっきり子供たちを殴りつけました。
子狸たちは正体を現し、泣きながら山に逃げ帰り二度と姿を現さなくなりました。
源哲は
「あの子たちがたぬきだったとは。わしを喜ばそうとしたばっかりに・・・」
と悲しみました。
しかしこのことで
「源哲が子供想いのやさしい人」
と知ることになり、親しく行き来することになりました。
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このお話の教訓はどこにあるでしょうか?
まず人は
「悪い情報に目が行く」
ということを表しています。
挨拶に行った村人は
「昼間から酒を飲んでいるからだらしない」
という悪い情報だけを目にしました。
これは本能の動きです。
悪いものを察知しなければ、生存競争で勝てないからです。
普段周りの人の
「悪いところばかり目につく」
というのはあなたの性格が悪いわけではありません(笑)
しかしこのお話では和尚さんは村人にだらしない人と思われてしまいした。
人間の脳では
「悪い印象による先入観」
は容易に形成されます。
しかもそれは
「時間の経過とともに膨れていく」
という厄介なものです。
子供たちが内緒で和尚さんのところに来ていたのは
「親たちの反対」
があったからです。
親たちの和尚さんへの評価は悪いもののままで、更に膨れていったのです。
本来、人間関係を上手く行う秘訣は
「良いことを追い求めるより、悪いことを避ける方がはるかに大切である。」
という研究結果があるくらいです。
恐らくこのままでは和尚さんは村人から嫌われたままだったでしょう。
ではなぜそれが変わったのでしょうか?
本来、悪い評価はなかなか覆りません。
しかも時間が経てばたつほど、ネガティブな気持ちはふくらみます。
■1つが良ければ全部が良い「ハロー効果」
それには
「ハロー効果」
が働いたからです。
親にとって命よりも大切な子供たちが慕っていた。
そしてその子供たちのために悲しんでくれた和尚。
これを自分の目で見たからでしょう。
子供たちを通じて、和尚さんの印象が良く見えたのです。
自分の目から見ただけでは、そうは思わなかったはずです。
そして
「1つの印象が良ければ、他の能力も優れている」
と認識をするハロー効果が働きました。
最後の評価は
「優しい和尚さん」
となって親しく行き来するようになりました。
■昔ばなしにも行動創造理論
この寓話には3つの行動科学が詰め込まれていました。
①人は悪い情報に目が行く
②ネガティブな情報は時間と共に膨れていく
③ハロー効果ですべてが良く見えるようになる。
このように昔ばなしからも
「行動創造理論」
が存在していることになります。
様々な寓話が
「ビジネスで役立つ理由には、行動科学があるから」
と言い換えることができるかもしれませんね。
今日はビジネス寓話シリーズ
「たぬきの手習い」
をお送りいたしました。