本日の記事の見出し
売り場以上に大切な場所を知っていますか?
今日はシリーズ
「ショッピングの科学」
をお送りいたします。
第32回のテーマは
「売り場以上に大切に扱うべき場所」
です。
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①衣料品店は感触と試用の1番地
②衣料品店が見落としていることとは?
③最新テクノロジーのバーチャル試着の効果は?
■衣料品店は感触と試用の1番地
これまでショッピングの科学シリーズでは
「感触」「試用」
が大切としてきました。
その最たるものの1つが
「洋服」
です。
「お客様が心ゆくまで触れることができない店」
というのは皆無でしょう。
そういった意味では
「感触と試用の一番進んだ場所」
と言えるかもしれません。
衣料品の店舗設計者は
「お客様が隅々まで見られるよう」
目線と動線に配慮をし設計をしています。
他店との差別化をするために、あの手この手を使って心を砕いています。
しかしここで見落としている点があるように思えます。
それは何でしょうか?
■衣料品店が見落としていることは?
衣料品店が見落としていることは何かわかりますか?
あなたもかなりの頻度で利用しているはずです。
最近洋服を買ったなら、その行動手順を思い返してみて下さい。
お店に入る
目当てのものがあれば、その売り場に行く
目当てのものがなければ、いろいろと見て回る
(その間、丁寧な接客を受けたかどうかは今回は省きます)
気になった洋服を手に取り感触を確かめる
身体に当ててみて何となく合うか鏡を見る
(このときに何げなく値札を見る人は多いでしょう)
気になった服が見つかったら、試着をしてよいか尋ねる
(この時点で男性は75%購入を決めています。女性はまだまだです)
試着室に移動し自分の服から売り物の服に着替える
鏡に映った自分を確認する
購入する決断ができればレジへ
購入する決断ができなければ店員に売り物の服を探す
こんな流れです。
売り場の設計
接客レベル
決済の手段
これらに気をつかっている企業はほとんどです。
しかしこの買い物の流れで見落としている点があります。
そこはどこでしょう。
答えは
「試着室」
です。
洋服を購入する際に大きな決定をする場所は
「試着室」
です。
買うか買わないかの最終判断はこの場所で行われます。
あなたも恐らくそうでしょう。
しかし試着室の設計に力を入れているお店は多くありません・・・。
■公営プールの更衣室のような試着室
意思決定の重要な場所にもかかわらず
「公営プールの更衣室」
のような試着室ばかりです。
お店の設計をする人はこれらのプロフェッショナルです。
売り場の見た目
動線の確保
従業員への配慮
しかしそれを優先するあまりに
「試着室のスペースを狭くする」
ということをしています。
多くの試着室からその無言のメッセージを受け取ることは容易でしょう。
しかし実際には
「売り場より試着室の方が重要」
かもしれません。
「店舗である最大の理由が試着できるから」
でもあります。
試着室に配慮をすれば確実に売上が上がります。
お客様にとって利便性を提供するだけではない
「れっきとした商売道具」
だからです。
実際にこんなデータがあります。
店員が声をかけると購入率は1.5倍
店員が声をかけて試着をすると購入率は2.0倍
つまり何もしないよりも
「声をかけて試着を促せば倍の売上」
につながるということです。
他のお店にはない試着室があったとすれば
「お客様を誘導しやすくなる」
のは言うまでもありません。
「うちの試着室はすごいんですよ。見るだけでもどうぞ」
と店員も促しやすくなります。
しかし多くのお店の試着室は
「公営プールの更衣室」
のようなものばかりです。
■どのような試着室が好ましいのか?
大切なのは照明です。
日中の光
蛍光灯
キャンドルの光
これらの光の違いで
「服の色や素材がどう見えるか」
がわかるようにすると良いでしょう。
鏡は大きくて良質なものを用意するのは言うまでもないでしょう。
また服を引き立てる小物を用意するとよいですね。
購入率が上がることが分かっています。
もう1つは
「試着室の外に小さな控室」
を用意するとさらに良いですね。
お連れ様が待てるようにしておけば
「その服を購入する後押し」
をしてくれるでしょう。
・照明
・鏡
・小物
・小さな控室
これらを準備した試着室は
「店員よりも雄弁なプレゼンテーション」
を押してくれることでしょう。
■最新テクノロジーのバーチャル試着の効果は?
最近ではテクノロジーをつかって
「バーチャル試着」
ができるようになっています。
これは短時間でいろいろ試せるので便利でしょう。
しかし、売上に繋がるかどうかは疑問です。
人の行動メカニズムに即していないからです。
まず
「感触」
を試すことができません。
人間の強い心理効用の
「見たものがすべて」
を満たすことができません。
デジタルの試着は手軽です。
店員の手も煩わせることはないでしょう。
しかし購買という観点で考えると
「手軽すぎる」
という点があげられます。
人は自分と相手が投資したものに価値を感じます。
わざわざここまでしてもらった。
わざわざ着替えて試してみた。
「返報性の法則」
「サンクコスト」
という心理効用が働きます。
試着した人の購入率が2倍になるのはこのような行動メカニズムに則しているからです。
人の買い物は
「まったくもって合理的ではない」
ということです。
そんな行動メカニズムに対して
「利便で合理的」
なものをぶつけるとどうなるでしょうか?
今日はショッピングの科学
「売り場以上に大切に扱うべき場所」
をお送りいたしました。